平成21年度 原阿佐緒記念館企画展

平成21年11月17日〜平成22年3月31日

歌と光 〜光をもとめて〜

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平成21年11月17日より平成22年3月31日まで、企画展「原阿佐緒 歌と光―光をもとめて―」を開催いたしました。

波瀾に満ちた生涯を送った原阿佐緒。決して平穏に満ちていたとは言えないその人生のなかで、彼女は何に光を見出し、生きる糧としていったのでしょうか。

それは密かに胸中に抱いた恋心であり、二人の子供達であり、そして短歌であったかもしれません。

阿佐緒の歌の中には様々な「光」が登場します。心の中に灯る希望を光と表現し、また風景や生活の中に「光」を見出しました。
陽の光、月明かり、稲妻、故里の家に灯る灯りと街の灯。
庭に咲く花に照る光、わが子の手の中の蛍の小さな光。
ある時は小さな希望を、またある時は悲しみを阿佐緒は「光」と言う言葉にこめたのでした。
今回の企画展では、そんな「光」を詠った歌と、阿佐緒が生きる上で希望の光となった「家族」や「歌の世界」に関する資料をご紹介しました。

雪ふればさびし音なくわが命白く光りて砕け散るかな

初秋の朝の座敷にちらばれる青き木の実の光冷めたき

追憶ははるかになりぬ暮れのこるひかりのごとくうすくはかなく

スケッチブック
原夏郎はがき(左)女人短歌よせがきはがき(右)

阿佐緒の人生は決して平穏なものではなかった。それでも、阿佐緒は日々の生活の中に小さな光を見出し生きて行く糧としていった。それは愛しい人と共に過ごす時間であり、子供たちの笑い声であり、画布に真向かう一時であった。そして、新たな世界へと飛び出そうとする時、そこにかがやく光を見出していたのかもしれない。

生きて行く支えとなった「光」、その痕跡はいまでものこされている。

うす闇に君が吸ふなる煙草の火わがかなしみをあつめて光る

海のはて今かかくろふ入りつ日の白金光をかなしみにけり

月のかげかくろふなべにさやらさやら声あるごとく星群れ光れり

アララギ「峡の家」原稿
女子文壇(複写)

阿佐緒にとって短歌とは正に生きていく上での「光」であった。あらゆる悲しみと喜びを、阿佐緒は歌に込め続けた。

わが子への思い、胸に秘めた恋、ままならない自身の人生、そして日々見つける小さな感動。それらを短歌に託しながら、阿佐緒はその平坦とはいえない道を歩んできた。山里に暮らしながら、また都会の灯を眺めながら常に短歌が阿佐緒とともにあった。

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